2012年5月10日木曜日

国と自治体の被災地のガレキ焼却処理支援を進めるための課題

震災に強い社会建設を可能にする市民主導型社会(1)

三石博行

自治体は放射性物質の付着したガレキを持ちこみ焼却処理してはならない

何故、市民がガレキの焼却処理に反対するのか。その理由は明らかである。つまり、ガレキに含まれている放射性物質へ不安を持っているからである。それに対して、国は不安を掻き立てるのみで、真剣に問題の本質を見ていない。

そして協力しない自治体や市民は震災支援の意識が無いという風潮で、この震災ガレキ処理を推し進めようとしている。何という貧弱な政治的姿勢なのだろうか。これが長い保守政権時代から政権交代した民主党政権のやることなのだろうか。

問題を整理しよう。何故なら、被災地にとってガレキ問題が復興を阻害しているなら、それを早急に解決する必要があるからだ。しかし、厄介なことはこれらのガレキに放射性物質が付着しているという危険性を持っていることであり、そのガレキを焼却処理した場合、焼却灰には高濃度の放射性物質が含まれるということである。

そこで、国や自治体はガレキの安全性を調査する必要がある。安全なガレキは即刻処理可能になる。しかし、放射性物質を持つガレキを全国で処理するとそれによって二次汚染が生じるので、これらの放射性物質の付着したガレキの焼却処理に関してはその方法が見つかるまで、福島第一原発の近辺に集め、その地域の放射性物質に汚染されたガレキと共に一時保管するしかないのではないかと考える。


もし、放射性物質を持つガレキ処理によって二次汚染が全国で広まるなら、その除染に必用なコストやその汚染によって生じる生活資源の劣化とその修復に必要なコストがどれだけ必要か正しく算出すべきである。そのコストを予測すると福島原発事故処理に必要なコストはさらに大きくなると言えるだろう。


つまり、この段階で国と自治体が行う対策は、放射性物質の付着したガレキの焼却処理によって日本全国に放射性物質の拡散が生じることを防ぐ必要がある。そして、同時に、放射性物質の付着したガレキの焼却処理の現実的な方法を見つけ出すことである。


下水処理汚泥焼却灰から検出された高濃度の放射線物質の処理は解決したか

昨年の8月から9月に掛けて、東京都や関東地域の自治体の下水処理汚泥焼却灰から高濃度の放射線物質が出てきた。その高濃度の焼却灰をどこにも動かすことが出来ず下水処理場に灰を格納する建物を建てた。こうした記憶が生々しく国民の脳裏に残っている限り、震災のガレキ焼却処理後に残る放射性物質への不安がつのるのは当然である。

事故後、こうした事態に遭遇した関東地方の多くの自治体がそれらの焼却灰の処分に困っているという現実があり、その解決も出来ないままに、ガレキ処理を全国の自治体にお願いしても、不安を掻き立てると言われるのは当然だろう。


そんな不安を無視して、国はガレキ焼却後の灰の埋め立て可能な許容量は8000bq/kgと決めた。この8000bq/kgの値の意味が説明されていない。つまり、この8000bq/kgの放射性物質は環境汚染や健康障害を引き起こす量でないことを国は説明しなければならない。また8000bq/kgの放射線量を示す焼却灰にどのような放射性物質が含有しているのか。すべて放射性セシウムなのか、それとももっと半減期の長い放射性物質はないのかを説明しなければならない。また人体に吸収されやすい放射性物質はないかも説明する必要がある。国が示す許容量8000bq/kgの基準は余りにも、国民の不安に対して理解のない表現(やり方)ではないだろうか。


三つの問題解決方法の提案

だからと言ってガレキ処理を進めない訳には行かない。そこで、各自治体はこれまで自分達のゴミ焼却灰の放射線量を測定し、その値よりも多くの放射線量を出すガレキは受け入れたくないと言う権利を持っている。それをまず、各自治体が地域市民に情報公開すべきである。

例えば、尼崎市の稲村和美市長は焼却後の灰に含まれる放射性セシウムが100bq/kg以内の場合であると述べたらしい。この場合、稲村和美市長はその根拠を説明する必要がある。つまり、現状の尼崎市のゴミ焼却灰の中に、すでに放射性セシウムが100bq/kgが存在するというなら、確かに、陸前高田のガレキを燃やして、放射性セシウムが100bq/kg以内であれば、問題ではない筈だ。

この稲村和美尼崎市長方式を問題解決の方法として導入することを提案したい。

1、他の自治体に焼却処理のために運搬するガレキの焼却後の放射性物質の放射線量を情報公開すること

2、受入を決める自治体は市民にその自治体のゴミ焼却灰が含む放射性物質の放射線量を情報公開すること

3、これらの放射性物質の放射能測定を自治体は第三者機関、取り分け自治体内の大学研究機関に依頼し、測定機関名、測定者、測定方法の情報を公開すること。(何故なら、国民の大半は原子力関連の専門家と言うだけで詐欺師のように不信を持っている。行政が勝手に専門機関を使って分析の結果安全でしたと言っても大半の市民は信じていないのである。そのため、分析を依頼した研究機関の情報を全て市民に公開する必要がある)


まず、国も自治体はこの三つの情報を公開しガレキの焼却処理を市民にお願いするべきである。


2012517日 誤字修正
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