2012年2月29日水曜日

プログラム科学論研究のあり方

理論的なものは実践的であり、実践的なものは理論的である

三石博行


社会生活生産活動の装置としての理論

人間社会文化現象の理解のための作業を人間社会学と呼んでいる。時代や社会によってを、人々が抱える課題は具体的には異なりながら、しかしその課題の基本には人間社会文化のあり方という共通したテーマが付きまとってくる。

言い換えると、生きているという人々の現実として人間社会文化の課題がある。その課題に対する解答を得るために、用いられる方法や技術を人間社会学と呼んでいる。つまり人間社会学とは、現実の生きて生活するための知的活動の道具や装置であるといえるだろう。

それらの理論の有効性を検証する手段は、それらの理論が示す方法や論理が実際の問題解決のために有効な分類や分析方法を与え、そして実践的な解決の糸口(対策)の提案を導くことができるかどうかという点のみである。つまり、現実の問題解決のために有効な装置(方法と論理)として機能しない限り、理論としての有効性は実証されないのである。


社会生活運営活動の装置としての制度

また、知の有効性はその方法や論理のみでなく、その知を運営する社会システムの問題に繋がる。つまり、知的活動はその知的活動を保障する社会制度によって確立しているといえる。

ある個人が科学的思索を行うということおいて、知的活動は個人の生活行動であるといえる。しかし、その個人的行為が、社会的行為となるためには、行為主体が個人から集団へと移行しなければならないだろう。

実践的に生活、社会経済(政治)活動を実現する装置として機能しない限り、知は社会的に問題解決力を持つことができないだろう。そのために、問題解決のための制度が作り出される。それが知的生産のための制度である。


問題分析のための検証活動

研究活動が具体的な対象を持つ限り、一般的な理論や一般的な研究体制をイメージすることは困難である。具体的な問題提起に対して、どのような研究方法とどのような研究システムが現実的でありより研究効果を発揮できるかが問われる。従って、それらの問題は常に時代や社会的制約の上に成立している。

研究者というある特定の時代性や社会性を前提にしながら、今、ここにという課題からすべての知的活動は束縛される。今、私は、3.11の課題を無視して、今までの研究とこれからの研究を語ることができないと思うのは決して感傷的でもなく、また流行的でもない。まさに、研究活動のあり方そのものを意味するのだと思う。

そのために、理論的検証作業として過去の学説を批判的に検討し、そして新しい切り口(仮説)の理論実証性をその論理性の中で検証しようとしているのである。それは丁度、理論式を検証するための計算機実験と類似している。繰り返し行われる計算機実験のように、人間社会学の理論(切り口)の有効性も、解釈可能な事例を多く取り出しすことによって、理論的な確かさが検証されていく。そういて仮説が生まれる。

そして、仮説の正しさは、唯一、現実的な課題の解決に対し有効であったかどうかという結果で評価されるのである。


自己組織性の設計科学(プログラム科学論)の理論の検証活動

人間社会文化現象を理解するためのこれまで人間社会学の中で用いられた用語、それらは何々学派や何々主義と呼ばれる学説に付随する用語として使われてきた。

例えば、社会実証主義では、統計学的方法が用いられている。また機能主義や構造主義では構造と機能、構造・機能の要素とその関係式、表象の記号とその意味や記号の意味するものと意味されるものという用語、そして現象学(現象学的な社会学)では内的要素と外的要素、役割意識と社会制度という相補的関係性、さらに解釈学では解釈主体や解釈行為の社会性や時代性と解釈対象(テキスト)の関係などが挙げられるだろう。

自己組織性の設計科学(プログラム科学論)の理論(仮説)を検証するためには、まず、上記した今までの人間社会学の理論で説明された解釈をすべて説明できなければならないだろう。その作業が上
記した計算機実験である。この作業は研究室や書斎で、しかも一人で十分可能だろう。殆どの人間社会学、特に哲学系の研究者の作業はこの計算機実験の作業を意味しているようだ。

しかし、それでは「自己組織性の設計科学」の理論は成立もしていないし、その有効性も検証されている訳ではない。その検証は検証しようとしている私の生き方や考え方に直接関係するだろう。つまり、私の問題意識にヒットして、阪神大震災や東日本大震災、福島原発事故等々の課題に関係しながら検証作業が提案される。

勿論、その場合、私はこの検証作業を進めるために書斎や研究室にこもっては出来ないことは確かだ。そして、現場とよばれる現実社会の中に飛び込み、目で見て、人に合って、話を聴き、また語りかけ、生活活動としてそれらの理論を検証、展開していくことになる。


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