2011年12月1日木曜日

国民の社会改革への参画こそ民主主義文化展開の唯一の方法である

成熟した社会・民主主義社会を発展させるために(2)


三石博行


  
国の曲がり角・問われる国民主権の社会制度

この国は今、大きな曲がり角に来ている。今までの社会思想や社会経済システムが立ち行かなくなっている。基本的な変革を社会が求めている。しかし、それが何であるのか、そのために何をなすべきなのか、どの課題から着手すべきなのか、問題解決への具体的な対策は社会的に明らかにされていない。しかし、多くの人々が、それぞれの立場からこれらの問題を指摘し、またその解決のための提案を行っている。そして、連日、それらの問題から生じる事件や出来事と呼ばれる社会現象が報道されている。

これらの問題の基底には、「国民主権」、「人権尊重」と「生活重視」の社会思想に基づく社会経済システムの検討が課題になっている。言い換えると、この国の大きな曲がり角の根本課題とは成熟した社会・日本の国のかたちを巡る議論であると言える。ここで謂う成熟した社会とは国民主権で運営される社会・民主主義社会であり、生活経済を重視する社会であるのだが、この社会理念は、すでに1947年に日本国憲法が施行された時に成立していると考えるだろう。しかし、現実は、この素晴らしい憲法に謳われた国民主権や人権尊重も、戦後そして現代まで十分に社会に浸透していたとは言えないだろう。

その理由は、明治以来、欧米列強の植民地化から国を守るために、天皇を中心とした統一国家の形成、国家主導の近代化(工業化)を行ってきた我が国の民主主義過程の歴史によるものである。その結果発展した国家資本主義経済、軍事大国化によって、この国のありかたは日中戦争、太平洋戦争へ突き進み、結果的に敗戦という旧体制の崩壊によって終焉するのである。これを一次資本主義過程と考えるなら、戦後は国民主権による二次資本主義過程が始まったと言える。

その代表的な変革が1947年のGHQによる農地改革であった。この改革は江戸時代から続く地主制度、つまり小作人と地主の関係によって成立している農業社会(アジア的封建主義制度の温床である社会)に資本主義化をもたらした。この農地改革によって伝統的な封建的農業社会が解体され、戦後民主義社会が出発したと言える。


民主主義とは民主主義文化の上に成立する生活文化と生活主体によって成り立つ

しかし、国民主権を謳った日本国憲法の施行と封建的土地所有制度の改革・農地改革が行われたその時から、日本の社会文化は民主化された訳ではない。民主主義の制度は自由、平等と博愛の社会思想を前提とした社会制度を持つことは当然の条件となるが、その制度を運営する社会機能がなければならない。制度が成立する必要十分条件として、その制度を担う人々の社会的労働(活動)が必要である。

一般的に制度が成立し運営されるのは、その制度を担う人々の社会的活動が存在するからである。国民主権を前提にした社会活動を行う人々はその意味、意義や任務を理解していることが前提となる。つまり国民主権の社会思想を実現するための社会的役割を自覚した人々によって民主主義は成立するのである。

国民主権や人権尊重を実現するための社会政治制度(社会形態)はそれを支える人的資源によって運営されるのである。社会的役割とよばれる社会労働力によって国民主権(社会機能)が確立しつづけるのである。つまり、国民主権とは社会機能状態であり、それは国民主権を維持する社会的労働(役割)によって維持されている社会運営の姿であると言える。1947年に施行した国民主権の理念は、その社会思想を生活文化として営む国民によって実現されるのである。その意味で、日本国憲法はその憲法の基本理念を日常生活の常識とする人々、国民文化の形成によって尊守されると言える。

以上のことから、この国の曲がり角で問われている社会的課題の解決力を持つ人々とは、民主主義思想を持ち生活文化を運営している人々であることが理解できるだろう。それは、一般の市民であり、日常生活を大切にする人々の群れである。これらの人々が政治、司法、行政、経済、環境、教育、外交、安全、福祉等々のすべての国家的課題に参画する制度を見出すことによって、その糸口、その手段や在り方を見つけ出すだろうと楽観していいのだと思う。



参考資料

Peter Ludwig Berger,Thomas Luckmann The Social Construction of Reality: A Treatise in the Sociology of Knowledge,Doubleday, 1966
山口節郎訳『日常世界の構成――アイデンティティと社会の弁証法』(新曜社, 1977年) 改訳新版『現実の社会的構成――知識社会学論考』(新曜社, 2003年)

つづき

現在問われている社会改革の課題
http://mitsuishi.blogspot.com/2011/12/blog-post_01.html

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ブログ文書集

1、ブログ文書集「原発事故が日本社会に問いかけている課題」目次
http://mitsuishi.blogspot.com/2011/06/blog-post_3562.html

2、ブログ文書集「東日本大震災の復旧・復興のために 震災に強い社会建設を目指して」の目次
http://mitsuishi.blogspot.com/2011/03/blog-post_23.html

3、ブログ文書集「日本の政治改革への提言」の目次
http://mitsuishi.blogspot.com/2011/06/blog-post_9428.html

4、ブログ文書集「21世紀日本社会のための大学教育改革の提案」
http://mitsuishi.blogspot.com/2011/04/blog-post_6795.html

6、ブログ文書集「持続可能なエネルギー生産社会を目指すために」
http://mitsuishi.blogspot.com/2011/11/blog-post_2842.html


12月7日 誤字修正
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