2011年4月21日木曜日

「科学の大衆化」研究と「吉田民人情報科学」の学習

プログラム科学論研究会活動報告(2)

三石博行



2011年3月から4月現在までのプログラム科学論研究会の活動を報告する。この一ヶ月間、二つの研究活動を行っている。一つはEddy VAN DROM氏との「科学の大衆化」に関する研究であり、もうひとつは槇和男氏との「自己組織性の情報科学」読書会である。


Eddy VAN DROM氏との「科学の大衆化」に関する研究

「科学の大衆化」に関する研究活動では、三石博行が1989年にGERSUP「フランスストラスブール第一大学 科学研究に関する人間社会学的研究所」での研究発表時に提出した報告書「La Vulgarisation scientifique comme l`identification du corp social」を基にしながら、日本社会での科学の大衆化の役割についてEddy VAN DROM氏(大阪大学理学博士・宇宙物理学)と分析を行っている。

特に、東電福島第一原子力発電所事故の背景、日本の原子力政策、原発に関する科学技術の大衆化の現状、そのフランスとの比較、等々のデータを用いながら、上記の報告書の批判的点検を行っている。

また、Eddy VAN DROM氏は、科学の大衆化に関する研究ですでに二つの論文(下記に示す)を発表している。それらの研究を展開する意味で、その二つの論文を再度検討しながら、上記した1989年の講演会報告書の分析を行っている。

1、Eddy Van Drom La Vulgarisation Scientifique Baudoin Jurdant : une perspective française 阪南論集 社会科学編 第36巻 第2・3号、2001.1、 pp95-113

2、Eddy Van Drom La Vulgarisation Scientifique (2) Perspective systémique et psychanalytique chez Hiroyuki Mitsuishi 阪南論集 社会科学編 第37巻 第4号、2002.3、 pp89-105

昨日の研究会では、科学の大衆化は社会身体(文化)が社会に登場した新しい科学技術の知識への文化的遺伝子確認作業であるという視点から考えると、科学の大衆化現象と技術改良の社会現象は類似する社会機能・構造から生じている。そのメカニズムを語る課題として吉田民人のプログラム科学論の理論が援用できるだろうという中間的結論に達した。


槇和男氏との「自己組織性の情報科学」読書会

吉田民人先生(以後、吉田民人と呼ぶ)のプログラム科学論・設計科学論を理解するためには、「自己組織系の情報科学」を解読しておかなければならない。しかし、難解の吉田民人のこの著作を完全に読みきるにはかなりの時間と根気が必要である。私も以前、この著書を読み始め、そして中途で何遍もやめてしまった。それぐらい、読み切るためには大変な努力を要請される本の一つである。丁度、廣松渉先生の哲学書を読んだときと同じような状態になる。

20代から30代前半まで京都大学理学部で量子化学の研究をし、その後、花王の研究所で長年研究を続けてきた槇和男氏(京都大学理学博士・量子化学)は非常に幅広い知識人である。物理学、理論化学、統計学、フルート演奏、哲学、言語学、神経生理学、園芸等々、彼の知識活動の幅は非常に広い。彼がプログラム科学論に興味を持ってくれたことが、困難な吉田理論の研究を進める上で大きな力となっている。

「自己組織系の情報科学」第Ⅰ部「情報」では、吉田民人が定義する情報概念を徹底的に解釈、点検、理解しながら一つひとつの文書を読み込んだ。土曜日の午前中4時間を掛けても、2ページしか進まないこともあった。これまで、半年以上続く学習会(毎週一回、3、4時間の読書会)で、我々の読書スピードは平均すると数ページぐらいであった。

吉田民人の情報概念を理解するためには、これまで生物学(遺伝免疫学、神経生理学)、心理学、言語学、社会学で述べられた情報関連概念(遺伝子、脳神経情報、認知心理情報、言語)がすべて対象となる。吉田民人が援用する幅広い先行研究で使われた概念を一つひとつ正確に理解するために、使われている用語を辞書で調べなければならない。インターネットがあるので用語検索は非常に楽になったものの、その用語数が生半可ではない。非常に多い。そのため、一つの文脈を理解するために、30分以上の時間を必要とすることもあった。

そして、漸く、前回の学習会から「自己組織系の情報科学」の第Ⅱ部「情報処理」に入ることが出来た。この章「情報処理」についても、前章と同じように吉田文章との格闘が待っていることは確かだろう。しかし、唯一の希望は、理論や化学の理論計算をするために長年プログラムを書いてきた槇氏の知識がその格闘に役立つということである。

これまでの読書会での我々の解釈を、このブログを通じて報告しなければならない。そのために、再度、これまでの学習会で理解した第Ⅰ部「情報」概念に関するテキスト批評を書かなければならないだろう。


1、槇和男ホームページ「読書と音楽」
http://www.asahi-net.or.jp/~aw7k-mk/books.htm



2、槇和男解説 「吉田民人著 自己組織性の情報科学」(2011年12月)



3、槇和男ホームページ「フルート」岩本由紀子さんとの演奏会(ピアノとフルート)
http://www.asahi-net.or.jp/~aw7k-mk/wma/110224-1.wax


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プログラム科学論・自己組織性の設計科学に関する文書はブログ文書集を見てください。

ブログ文書集「プログラム科学論・自己組織性の設計科学」目次と文書リンク
http://mitsuishi.blogspot.jp/2012/03/blog-post_3891.html
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