2011年1月11日火曜日

「レポート材料の作り方」について(1)

三石博行

レポートを書くための準備作業


レポートの材料作り・テキスト批評

高等教育では、自主的な研究の技法や姿勢を学ぶことが課題になっている。大学での知識の習得の中で重視される課題は、知識の習得姿勢を学ぶことである。

つまり、科学技術文明社会では知識は日々生産され、そして消費され、再生産され続ける。この社会が必要とする知識人とは、知識を所有する人だけでなく、知識を再生産する人である。つまり、つねに社会が要請しつづける新しい知識を学び、また研究し続ける人々がこの社会のリーダーとなる。

その意味で、現代社会は大学に対して、知識の再生産能力をもつ人々の育成を期待している。専門基礎教育を担う大学学部教育では、専門基礎科目と共に、知識の再生産の技法を教えることになる。

その課題を実現するために、「学部基礎教育における知的生産の技術」に関する課題、知的生産の技術としての講義ノートのとり方、レポートの書き方の学習を企画した。

学部でのすべての講義を通じ、講義情報をスケッチ、記述、収集、整理する技術と、資料を分析する技術、さらには課題にそって資料を調査し整理分類する技術について学ぶ。

ここでは、受講ノート作成、レポート提出など、演習ゼミや講義を通じて学部教育で日常的に行われている作業の中で、自主的な研究活動に必要な技術、知的生産の技術の基礎を身に着けることを課題にする。

このレポート材料の作り方を具体的に習得するため、河野哲也氏の著書 『レポート・論文の書き方入門』の「2章 テキスト評価という訓練法」pp13-29 のテキスト分析、評価と解釈の資料を作成してみた。資料の作り方は人それぞれであるが、資料作成の参考となる。



レポート課題を決める

まずレポートの課題を決めなければならないのであるが、決定したテーマが、必ずしも、書くために適正であるとは限らない場合も生じる。

例えば、テーマが大きすぎると、レポートとして纏められない。レポートのテーマに「人間とは何か」という課題を選んだとする、このテーマはあまりにも一般的で、漠然としている。そのため、人間の何について書いたらいいかとテーマを決めた後で課題が生まれる。人間とは何かという課題について考え、例えば「生物的な人間」のについて書いてみようかとか、また「社会文化的人間」な人間の側面について書いてみようかと、さらに課題が生まれる。このように大きなテーマを選ぶと、そのテーマからさらに新しいテーマがうまれるのである。

レポートのテーマが大きいのは、レポートに書く課題が具体的になっていない現状を物語っている。つまり課題が決まらないときには、必ず大きなテーマが浮かぶ。その大きなテーマをさらに検討することで、具体的なテーマに絞られてゆく。大きなテーマしか浮かばない場合は、テーマが決まっていないと思えばいいのである。その大きなテーマを具体的に考えることで、レポートのテーマは絞られる。

レポートのテーマを決める場合に、一般的な課題からテーマをイメージするのでなく、学習や生活の中で常日頃感じている疑問や問題意識から、具体的な課題を選択することが大切である。何故なら、レポート作成は研究調査活動の一つであり、自主的な学習態度を持たなければ出来ない作業である。その意味でも、知りたいと感じている課題を選ぶことによって、自主的な学習活動は自然と進んでいくものである。 疑問や問題意識がなければレポートを作成することは難しいといえるだろう。

一般に、専門的な論文やレポート(報告書)になるに従って、テーマは具体的で詳細になる傾向がある。すでに色々な知識があり、またそれに伴う具体的な問題意識を持つために、レポートのテーマもより具体的になる。すでにある課題に関して詳しく知っていることが具体的なテーマを選ぶ条件になる。つまり、具体的なテーマとは、より明確な課題にテーマが絞り込まれたことを意味している。

例えば「レポートの書き方」という課題から「レポート作成のための資料の収集の仕方」とすると、より具体的になる。さらに、「図書館を活用した資料収集の仕方」とするともっと具体的なレポート課題になる。

しかし、逆に余りにもテーマが詳細すぎると、レポートの体裁を作らない場合が生じる。例えば「大学付属図書館の「資料検索」サイトによる文献調査の方法」となると、レポートの形式を取って説明する必要もなく、資料検索マのニュアルとしてまとめることで十分となる。
レポートを書きなれていない学生にとって、レポートの課題を決めることすこし困難に思える。しかし、レポートを書く訓練を続けることで、その要領を理解できるようになる。大切なことは、日ごろ関心を持っている具体的な課題をレポートの課題として選ぶことである。

例えば「人間と倫理」の講義に関して「自由課題」のレポートの提出を求められた時、日ごろ自分が関心をもっている「人間と倫理」の課題、例えば「友情を大切にするこころ」とか「家族を大切にするこころ」などをテーマにすることでレポート課題が決まるだろう。

自分の関心のある課題を書き、それらの課題に関するして「何故、それに関心を持っているか」、「その課題を考えることの意味は何か」という疑問を投げ掛けてみて、それについて具体的に書くことができるなら、それらの課題はレポートの材料となることを意味する。


参考資料

1、「大学でのノートの作り方」(1)
http://mitsuishi.blogspot.com/2010/11/1_24.html

2、「大学でのノートの作り方」(2)
http://mitsuishi.blogspot.com/2010/11/2.html







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