2010年11月24日水曜日

大学でのノートの作り方(2)

三石博行


3、調査資料の収集や問題分析の道具としてのノート

講義ノートの取り方

講義ではシラバスに示されたように、その都度(一回の講義毎に)具体的な講義課題(学習目標)が与えられる。それについて講師は、教材を提供し、講義を進める。これが一般的な大学での講義のあり方である。

講義を受ける学生諸君は、以下の課題について理解をしておく必要がある。

1、講義で提供される知識(情報)を、講義中に記録する技術が必要となる。

2、板書で書かれた情報以外に、口頭で述べられる情報を記録するテクニックとスキルを磨く必要がある。

3、それらの講義時間に記録した情報(講義内容)と、講義後にまとめ、不明な用語や知識に関する情報を図書館やインターネットを活用しながら調べ、その調査情報を記録するための技術が必要である。

4、 講義情報と調査情報を一元的に管理する技術が必要である。例えば、ある課題について講義で学んだ。それについてさらに図書館で調べた。その講義で得た知識と図書館で調べた知識をばらばらにファイルするのでなく、一つのノートに管理する方法

5、科目によっては講義課題に関する、もしくはその応用問題として「レポート提出」が要求されることがある。レポートを書くために、講義で得た情報と図書館やインターネットで調べた情報を一元的に管理できるノート作成の技術が必要となる。


講義ノート作りを楽しく工夫する方法
 
調査し、考え方を纏め、分析するための道具(手段)としてのノートは、各自、自分のノートの書き方がある。よりよいノートの作り方を模索する時間が、大学では講義の時間に与えられている。そして、多くの学生が同じ講義で自分なりのノートを工夫している。

友達のノートのとり方を見ることが出来る。より合理的なノートのとり方を見つけ、また友達と大学でのノートの作り方の工夫をすることも出来る。そして、自分のノートの様式やノートの作り方を獲得できれば素晴らしい。


大学卒業後に役立つノート作りを目指す
 
知識の半減期という言葉がある。自然科学の知識、例えば古典物理学のニュートン力学法則に関する知識は、100年後も変化しないだろう。しかし、科学の進歩によって常に新しい知識が付け加わる。

特に、人間社会科学の知識は、古い知識が否定され新しい知識が登場する場合がある。大学で学んだその当時先端の知識も、時代が進むにつれて、古い知識になる。その知識の有効期限を示す言葉に「知識の半減期」という表現が使われている。

つねに、知識は刷新され、あたらし知識が登場し、大学で科目として提供された学問の内容(知識・知的情報)の変更、修正、追加が要求される。この要求に答えられるノート(知的情報の収集記録帳)の作り方を学ばなければならない。

つまり、社会に出てからも使えるノートを作るにはどうすればいいのかを今から、この講義を記録する中で、一回生の前期から考えよう。


学問的知識(知的情報)の姿、体系の中にある知識
 
大学で学ぶ知識は、その知識が形成された学問的背景を持って成立している。それらの知識は、過去にすでに成立した学問として評価されているものである。そして、それぞれの知識は、専門的な知識の一部をなしているものである。

例えば、環境学で地球温暖化の原因である二酸化炭素について講義で話されたとする。温暖化原因が二酸化炭素であると述べられる。それが何故、地球温暖化の原因になるのかは説明されない。そこで図書館で調べることになる。
つまり、二酸化炭素が地球から放出される長い波長の光(遠赤外線光)を吸収するからであると説明される。では、何故二酸化炭素がその光を吸収するのかという疑問に出合う。その説明を可能にするには化学の知識が必要となる。

二酸化炭素の化学分子構造、炭素と酸素の二重結合が吸収する赤外線領域の波長(エネルギー)によって生じていることによる。ガス状態の二酸化炭素が地球温暖化の原因となるという知識は、有機構造化学や有機物理化学の知識が背景にして理解可能になる。

つまり、大学で学ぶ知識は、体系的に整理されている知識の一部から取り出されたものである。そのため、講義で提供される知識(情報)をよく理解するために、さらに、その知識の背景になる知識が必要となる。体系的に成立している知識を前提にしながら、要約、理解に辿り着くのが大学で得る知識の姿である。


調査情報を入力できる形式の講義ノート作り 

後から調べた情報が付け加えられるノートの形式は、一つ一つの課題を分類可能な形式で記録するノートを意味する。概念を分類可能に記録するノートには、少なくとも講義の中で取り上げられる課題に関して、それらの課題の個別のテーマ、またその中で述べられた個別の概念を、それぞれ別のページに書くことによって、概念を分類可能な状態で記述することができるようになる。

つまり、講義の中で取り上げられる色々な課題を、そのまま続けて書くと、異なる概念や課題が一つのノートに記述されてしまう。ノートをそれぞれのテーマの記述されている部分ごとに分けるには、ページを切る以外にない。それはできないことである。
そこで、ひとつの課題、ひとつの概念について、もったいなくても1枚のノートを使う。課題が移れば、新しいノートに書くことにする。テーマに即して、テーマ毎にノートを分けて、課題別のカード式のノートを作る。

講義を記録してから、講義で述べられた情報を後で調べ、調査から得た情報をノートに付け加える。その時、カード式ノートは、新しい情報を簡単に付け加えることが出来なくなるのである。


4、カード式ノートの作り方の技法

講義内容(情報)を記録するノート

大学での講義をノートに記録するために、カード式ノートの作り方の例を図1に示す。
カード式ノートのページは、大きく三つの異なる情報入力箇所がある。

Aの左端縦の余白は、講義の内容を書くためにあるのでなく、あとで調査したり復習したりするときに、Bに書いた情報を簡単にまとめるためにある。

Bは講義中に情報を記録する箇所である。綺麗に書くと言うよりも、より多くの情報を入力する技術を身につける必要がある。

Cは講義の課題(テーマ)を書くところである。また、調査を行う場合には、ノートを別にして調査の課題を書く。

図1 カード式ノートの作り方の例

(ブログでは表や図が表示できません。後日、ホームページで、pdfファイルで資料を提供します。また、Excel形式で作った三石式ノートを提供します。)

C.例えば今日の講義のテーマ(課題)を書く。しかし、講義の課題が別のテーマに変わったら、新しいノートに書く。贅沢なようだが、一つひとつの課題別にノートを作ることで、あとでその課題に関して図書館やインターネットを通じて調査した場合に、このノートの続きにそれらの調査資料を付け足すことが可能になる。


課題別分類ノート(集めた情報を分類し整理できる表紙)の書き方

大学での講義内容は、体系的な知識を援用し(活用し)提供されている。つまり、ある概念が社会学から導かれるなら、その概念をつかって新しいことを説明するのに化学の領域に関する課題について説明することはない。必ず、社会学の学問領域内で説明を行う。

そして、その概念が他の領域に広がる場合には、必ず広がっていく領域での社会学の概念に解釈を行ってから、境界領域(社会学に隣接する学問領域)へ拡大解釈を行う。この手法が一般的である。

一つひとつの課題に関して情報を分類するために、課題名を書いた表紙ノートの作り方を説明する。

図2 課題別分類ノート(表紙用ノート)

(ブログでは表や図が表示できません。後日、ホームページで、pdfファイルで資料を提供します。また、Excel形式で作った三石式ノートを提供します。)

1の情報コードボックスの二段目は、章や節など課題に与えられた分類コード番号を入れる箱として活用する。

2の課題名のコーナーに、講義の課題を書く。例えば、現代社会学の講義で何回かにわたって「現代社会の特徴としての科学技術文明」講義課題を書く。

3は課題の展開項目の情報を入力する。例えば、「現代社会の特徴としての科学技術文明」について講義課題に興味を持っていたので、図書館で調べ、インターネットで調べて、色々な情報を入手した。それらの集めた情報を分類し、分類した情報を課題別に書く。



表紙を構成している箱の役割と名前

1、分類コード記入ボックス

図3、分類コード記入ボックス

(ブログでは表や図が表示できません。後日、ホームページで、pdfファイルで資料を提供します。また、Excel形式で作った三石式ノートを提供します。)

1の分類コード記入ボックスは、集めた情報が講義課題の展開の中で占める部分に関する情報を記入する場所である。つまり、情報コードボックスの三段の、一段目が講義課題のコード番号、二段目や三段目は、章や節など課題に与えられた分類コード番号を入力できる。勿論、その使い方は自由である。この分類コード記入ボックスをつかって、集めた情報の集まり(課題別情報)が全体の課題の中で占める位置を表現できれば良い。

2、タイトル名記入コーナー

課題「科学技術文明社会の意味」を書く
図4、タイトル名記入コーナー

2のタイトル名記入コーナーは、講義課題の展開の中で集めた情報集団(あつテーマや概念に関する情報)に関するタイトルを記入する場所である

3、収集した情報の項目名(2の課題で収集した色々な情報に関する情報)

3の収集した情報の項目表では、講義ノート、図書館で調査したノートや資料、インターネットで調べた資料など、2の課題に関する色々な情報のタイトルを記入する。この表紙に記入された情報によって、どのような情報が集まっているかを一目瞭然に理解できる。

図5、収集した情報の項目
1 評価の仕方、ノートの作り方

講義科目の章や節の展開、その題名を記入する

大学での講義は体系的な知識を前提にして提供されている。

図6、表紙の作り方


1分類コード記入ボックスには講義課目のコード番号を記入する。

2のタイトル名記入コーナーには講義課題名を入力する。

3には、講義課題の展開、つまり、章に分けた課題名、もしくは節に分けた課題名を記入する。

図7、具体的な例

例えば、科学技術史の講義ノートの表紙は以下のように作ることができる。

科目「科学技術史」の中の第一章「科学技術の歴史とは何か」

第1章 科学技術の歴史とは何か         

1,歴史とは何か、何故人は歴史を学ぶか
2,現代生活のかなでの科学技術
3,科学技術の歴史をなぜ学ぶのか

つまり、科目名が「科学技術史」であれば、科目の表紙のタイトルは「科学技術史」と書く
この授業で、展開していく大きな課題
例えば

第一課題が「科学技術の歴史とは何か」であれば、次の表紙形式のノートのタイトルは
「科学技術の歴史とは何か」と書く。その「科学技術の歴史とは何か」に関する課題を1章として書く。

さらにこの第1章がさらに細かく幾つかの課題から出来ていて、そのはじめの課題が「歴史とは何か、何故人は歴史を学ぶのか」というテーマを第1章1節として書く。
続けて、2節が「現代生活のかなでの科学技術」という課題であれば、その課題名を書く。


まとめ

つまり、カード式ノートは

1、 学習過程で得た情報をすべて保存することが出来る。

2、 それらの情報を課題展開に即して分類し、配列することが出来る。

3、 その分類配列した情報から、学習科目の全体的な課題を理解することが出来る。

4、 その理解に即して、新しい情報を調べ、調べた情報を更に入力(分類配列)することが出来る。

5、 そしてそれらの情報を活用して、レポートを書くことに利用できる。

お断り
上記しましたように、ブログでは表や図が表示できません。後日、ホームページで、pdfファイルで資料を提供します。また、Excel形式で作った三石式ノートを提供します。


ダウンロードの方法
「三石博行のホームページ」の「教育・講義」の「知的生産の技術」のページにある「ノートの作り方」の中に「教材提供」のコーナーがあります。そこの「カード式ノートの提供」をクリックしてください。
http://hiroyukimitsuishi.web.fc2.com/kyoiku_03_01.html

1、ノートの作りかた 「三石式ノート」
http://hiroyukimitsuishi.web.fc2.com/kyoiku_03_01.html


1、ノートの作りかた 「三石式ノート」
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ブログ文書集「知的生産の技術 基礎編」 8章 「議論や討論の仕方、纏め方や文書化」
http://mitsuishi.blogspot.jp/2012/03/blog-post_19.html

変更 2011年1月27日





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