2010年11月24日水曜日

大学でのノートの作り方(1)

三石博行


1、学習の前に、何故ノートの取り方を問題にするのか

大学の教育で最も大切なことは、あるテーマに関して、それを自分で考え、その課題を解決し解明するために、調査し、分析しながら資料を作成し、それらの資料を整理し、分類し、そして説明するためにまとめ、他の人々に分かりやすく、論理的に、説得力をもって表現し、発表する力である。

これらの調査、分析、纏め(まとめ)、表現と発表の過程の基本作業は、資料の作り方から始まる。資料の作り方を身に付けるために最も基礎的技術として大学でのノートの取り方やノートの作り方がある。大学の講義ノートの取り方を通じて、上記した資料作りの最も基礎的技術を身につける学習を行う。

つまり、ノートを取ることは、単に講義内容を理解するだけでなく、レポートや論文を書くための基礎的作業を身につけることである。例えば、レポート材料の一つであるテキスト分析や評価の資料を作る場合にもノートのとり方の技術は必要とされる。そして、フィールド活動を行いながら、現場で取材や調査を記録しながら作る資料を作る場合でもノートのとり方の技術が基本となる。さらに、グループ学習に参加し、ある課題について議論しながら討論のやり取りを記録する場合でもノートのとり方の技術が必要とされる。

ノートの取り方は、知的生産を行う場合の最も基本的な活動の一つである。つまり、情報入力の技術であり、出来るだけ多くの情報を無駄なく、しかも多くの労力を費やさないで要領良く入力する技術を身につけるための技術である。

知的生産を行う場合に最も基本的な作業とし、ノートの作り方の技術を身につけることが課題になっていることを理解しなければならない。


記録する目的によってノートの取り方は変る

書くことは学びの基本

書くことによって私たちは情報を収集、整理しまとめ、また自分の考えをまとめ、分かりやすく表現することが出来る。書くという行為によって、過去の自分や自分の周りの姿(心象や社会現象)を記憶しておくことができる。書く行為を人類が見つけ出したこと(文字を発見したこと)によって、社会は大きく発展した。

書く行為を身に付けることによって、人々は社会での仕事や活躍の場を与えられてきた。古い時代から、人々は読み書きを学び、よりよい(仕事)社会的地位を得る努力をしてきた。学ぶことの第一歩が読むこと書くこと計算することであることは、古い時代から現代まで共通しており、それが学習の基本であった。
 
目的に合わしてノートの形式が決まる

大学生活、つまり大学で行われる講義、演習(語学、技術習得や実験等)、ゼミナール、卒業研究に対応したノート、また日常生活を維持するために自分の生活記録、家計簿や行動予定を書くノート、そして友人と意見を交換するために書くメールやブログのためにスッケチノート等々、目的にそってノートを作ることになる。

それらの目的に合して書く行為の形式や様式(ノートのスタイル)は決定する。以下、幾つかの異なる書く行為目的とそれに合った様式を書いてくる。

1、知識を覚えるため (高校までのノート、大学でも語学や演習用のノート)

2、情報を収集し、整理し、まとめるため(フィールドや調査用のノート)

3、会議や人との会話の記録のため(会社、社会活動をするとき必要なノート)

4、アイデアをまとめるため(研究や論文を書くとき必要なノート)

5、自分の気持ちを書くため(日記など)

情報収集、分類の道具としての講義用ノート

今回、特に上記した2の課題、つまり講義用ノートの書き方について述べる。

大学の講義用ノートは、高校時代までのノートと違う。その違いは上記した1と2の違いである。つまり、高校までは、大学入試のために、多くの知識を暗記しなければならなかった。そのため、暗記しやすいノートの形式を小学校から学んできた。暗記は学習の基本である。学習を続ける限り暗記する作業は常に続くのであるが、高等教育では、暗記以外に「考える」作業を大切にする。

そこで、上記した2の形式、つまり、情報を収集し、整理し、まとめるためのノートの作り方を学ばなければならない。

大学の講義の特徴は、講師が教材を作ってくることである。高校までは、指定されていた科目には文部科学省の認可した教材が活用され、教師は科目ごとに学習指導要領が与えられ、その指導要領に即して教えなければならない。何故なら、それらの知識は基本的な知識であり、最低限理解しなければならない基準を持っているからである。

しかし、大学では、それらの高校までの教育レベルを前提にして、高等教育が行われる。大学の教師は教育者であると同時に研究者としての側面を持っている。つまり、それぞれの教員は自分の専門分野の研究課題を抱え高等教育を担当している。そのため、学習指導要領はない。

講義課題は文部科学省が認可推薦したものであるが、その講義内容は講師に任されている。そのため、講師は講義の前に「シラバス」で講義内容を公開する義務を負っている。

つまり、大学での講義は、講義を受ける学生からすると、教育課題(科目)について、与えられた講義環境(講師と彼が提供する講義内容)で得る知識である。それらの知識は、科目として示される学習課題の一部に過ぎないことを理解しなければならない。

言い換えると、同じ講義課目でも講師によって提供する知識(情報)はまったく異なることが生じるのである。そのため、学生は、より自分に適した、また自分に役立つ講義を受けたいと願うのであるが、時間割等々の都合で、それも十分満たされることはない。

そこで、まず、大学の講義を受ける前に、ノートの取り方を工夫することで、より多くの知識(情報)を獲得し、いろいろな側面から解釈される一つの概念を入力し(記録し)、それらの情報を整理するノートの作り方について学ぶ必要がある。

課題

1、情報収集のために便利なノート

2、集めた情報を分類・整理するのに便利なノート

3、分類整理した情報(ノート)を使って、課題ごとにまとめる作業をするのに便利なノート

4、大学時代の受講や調査資料が社会に出てからも活用できるノート

以上、4つの課題を満たすための大学での講義ノートの作り方を学んでみよう。


つづき
「大学でのノートの作り方(2)」
http://mitsuishi.blogspot.com/2010/11/2.html

また、
三石式ノートをダウンロードできます。

ダウンロードの方法
「三石博行のホームページ」の「教育・講義」の「知的生産の技術」のページにある「ノートの作り方」の中に「教材提供」のコーナーがあります。そこの「カード式ノートの提供」をクリックしてください。
http://hiroyukimitsuishi.web.fc2.com/kyoiku_03_01.html

1、ノートの作りかた 「三石式ノート」
http://hiroyukimitsuishi.web.fc2.com/kyoiku_03_01.html




ブログ文書集「知的生産の技術 基礎編」 8章 「議論や討論の仕方、纏め方や文書化」
http://mitsuishi.blogspot.jp/2012/03/blog-post_19.html


変更 2011年1月27日







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