2009年8月4日火曜日

プログラム科学論の研究課題

三石博行

プログラム科学論と人間社会学基礎論の課題

A, 問題提起としてプログラム科学論の展開のための研究課題

1、 自己組織系の情報科学とその情報概念に対自している実在概念の展開の必要性 

2、 情報性と実在性の一般概念を、人間社会学のレベルに落とすと、「知識」と「資源」の概念にならないか。

3、 自己組織系の情報科学に含まれる「狭義の情報概念」としての「知識」から、知識社会学を位置付けなおす必要はないか。

4、 狭義の資源概念としての社会や生活資源はマルクスのいう資本の概念と同義語であるなら、資源論は資本論の上位概念として展開できるのではないか

5、 人間社会学のレベルでの自己組織系の情報―資源科学は、知識社会学と社会文化生活資源論の二つの相補的学問領域として展開されないか。

6、 それらの自己組織系の情報-資源科学の科学哲学として、プログラム科学論が位置するのではないだろうか。


B.人工物プログラム科学論の課題

1、 人工物プログラム科学論の領域内に含まれる学問分野として人間社会学が挙げられる。その学問分野での中心課題は、人間社会情報と人間社会資源である。

2、 人間社会情報の現象(意識)形態を知識と呼ぶことにする。すべての人間社会情報はその了解過程では言語形態の情報、言い換えると知識として現れる。

3、 それらの言語形態の情報・知識は生活主体とその環境に対する指示情報を持つ。つまり、生活世界における知識とは、その生活世界の現実を理解するだけでなく、それに作用し、それを変えるものである。

4、 また、生活世界の知識(生活情報)は、どの社会的環境に対しても共通に成立する生活主体の社会的生存条件を確立するための一次生活情報の形態がある。

5、 さらに、生活主体の社会文化的環境に対して適用し、その社会文化的機能を担うための二次生活情報の形態がある。それは当然、その社会文化環境の改善を前提にしていると同時に、それはその特殊な社会文化的条件の生活情報、知識であるといえる。

6、 当然、生活世界(生活空間)の中には、それぞれの個別の特徴ある社会文化空間性が存在し、そして、その中で生活主体は、生活空間の豊かさを直接の目的にしない生活行動を取る場合がある。それらの行為の目的は、生活者自身の内的現実(主観的現実)を満足されるためにのみに生活行為が遂行される。それを三次生活行為といい。また、そのために必要とされた社会生活情報、知識を三次生活情報と考える。

7、 社会生活情報の主観的にも客観的にもその実在的、つまり物質的背景を資源、資本と考えるなら、社会・生活世界の科学は、社会・生活世界の情報(知識)とその資源に関する科学であると謂える。社会・生活世界の情報-資源の科学、これは人間社会学として分類されてきた科学領域、の科学哲学として、人工物プログラム科学論が位置する。


C.人工物プログラムに関する分析課題1 外在化過程

1、 現象学の古典的テーゼ、「内的世界の外在化と外的世界の内在化」。この主観的現実と客観的現実の弁証法的運動として認識、意識形成過程、生活世界の現象形態を理解してきた。

2、 言語過程、生活行為過程、労働過程、生産過程はともに内的世界の外在化過程である。この内的世界の外在化過程(言語活動、社会生活行為)によって社会生活資源が作り出される。それらの社会生活資源の匿名状態過程を物象化といい、それらの物象化された生活資源によって社会生活環境が作り出される。

3、 その形成過程は、社会生活主体のもつ社会的機能に対する意識、社会的役割に対する自覚とそれを実現する行為によって生み出される。それらの行為は、社会制度として外在化している情報(知識)によって制約され、決定される。

4、 つまり、外在化過程には生活主体の行為を決定するプログラムとその行為の条件を決定するプログラムがある。生活主体の行為を決定するプログラムは様式とよばれた。つまり、生活主体がその自我の構造として、生活の知恵、科学的知識、技能として持ち、自我を構成する情報の一部として所有する行為を決定する知識、プログラムである。

5、 また、それらの生活主体の行為は、それを取り巻く社会生活環境によって制約されている。この制約条件と呼ばれる情報、社会的現実として与えられた環境が、行為主体の洋式を制約、規定する。その意味で、制約条件(決まり、習慣、法律)の情報とその情報が発生する社会機能と構造を形成するプログラムがある。

6、 社会生活行為を生み出すプログラムとは社会的役割に即した行為を選択遂行する自我の構造と機能を意味する。自我の行為条件を決定する社会生活環境のプログラムとは社会的制度の内容を意味する。その制度は社会的経済的分業、社会的経済的コミュニケーション、社会的経済的生産過程に関する制度を意味する。

7、 この研究は、言語学、発達心理学から社会学や経済学までの研究成果を前提にしながら進むものと思われる。

D।人工物プログラムに関する分析課題2

内在化過程

1、 最も、神秘的なプロセス、人は何故、言語を習得したのか、社会的文化的アイデンティティを確立したのかという疑問がこの課題に付随する。

2、 この研究では、身体化の過程を問題にしなければならない。つまり、外的世界の情報、その世界での個人の特殊な社会的役割の了解作業が、その個人の自我の形成過程と密接な関係にあることは言うまでもないが、その情報は身体化され、つまり、脳神経生理的な物質的土台に入力されなければならない。その入力の過程の脳神経的、精神内科的、精神分析的、心理的作用、それを決定する機能が問題となる。それらを、内在化過程のプログラムと呼ぶことはできないか。

3、 今まで、このプログラムに関しては、絶対に相容れない二つの(もしくはいくつかの)理論があり、それによって、このプログラムに関して語ることが非常に困難であった。一つは脳神経学、もう一つは精神分析学である。現在は、脳神経学が優位に立ち、「脳科学」という用法で、行為過程の説明を試みている。しかし、それに対して、精神分析は、その説明では個人とよばれるある特定の社会的文化的存在者の言語活動の具体的内容まで立ち入って説明できないことを主張するだろう。

4、 客観的現実、社会的実在、生活環境や生活資源の物質的要素が決定する主観的世界形成過程は社会的様式(社会規範、習慣、社会制度や分業)が内的世界の行動規範にプログラム化されることである。そのプログラム化は内的世界、つまり生活主体を作る身体にそのプログラムを入力し、脳神経生理的物質化すること、その行動様式を生みだす身体運動を支える筋肉から反射運動までの肉体を構築することである。

5、 また、それらの運動を生み出す自我、意識、言語活動の身体的土台を作ることである。


あとがき

1、 プログラム科学論を展開するために、人間社会学の研究課題に引き付けて、その公理の一つ一つを検証しなければならない。今、資源論の著作作業の最中です。この課題までは行き着きませんが、作業の中で、不断に検討する必要がある。



参考
三石博行のホームページ 「哲学」「プログラム科学論」
http://hiroyukimitsuishi.web.fc2.com/kenkyu_01_03.html



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プログラム科学論・自己組織性の設計科学に関する文書はブログ文書集を見てください。

ブログ文書集「プログラム科学論・自己組織性の設計科学」目次と文書リンク
http://mitsuishi.blogspot.jp/2012/03/blog-post_3891.html


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